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【Vlog】ドキュメンタリー動画を作成したお話

よもや、よもや。YouTubeに顔を晒す日が来ようとは。

ドキュメンタリー動画の作成にまつわるエピソードや所感諸々をブログにまとめました。

また本編に付随したメイキング動画も懲りずに自作したので、併せてご覧くださいませ。




YouTubeチャンネル ⇒       https://www.youtube.com/channel/UCVy5aor4Pw-7njWsPnYjszA
YouTube英語字幕あり版 ⇒        https://www.youtube.com/watch?v=TG9wZjtDcgs

制作を依頼したのは映像作家の小倉裕基さん。

彼の作品群はしばしば拝見していて、そのセンスは疑いようもなく全幅の信頼を寄せていました。悪く言えばおんぶにだっこ。仕事ぶりに口を挟むことはなにもないのでとにかくよろしくね、という投げっぱなしジャーマンなオーダーで。

とはいえそもそもの他人同士が共同でなにかを創りあげる作業は思ったよりも難しかったのです。お互いに組織や連帯を疎んじるフリーランス稼業なわけですから、なおさらのことかもしれませんが。

当初想定していた商業的なプロモーションビデオに違和感がある。何度かの打ち合わせの末にやはり泥臭いドキュメンタリーに、と。するとピタリと据わりが良くなりました。

結果として小倉裕基の本領であるドキュメンタリー作品の末席に並ばせていただくことに。これが最適解だったと強く感じています。改めて、厚くお礼を申し上げます。


作成していただいた動画は教育チャンネルの啓蒙番組みたいに、みんなもっとセクシュアルマイノリティについて勉強してLGBTについて理解してといった押し付けがましさがありません。

よく横断幕を掲げて声高に主義主張するLGBT当事者がフォーカスされますが、当事者が皆一様に同じ方向を向いているわけではありません。あたかも自分らの代表であり総意であるかのように立ち居振る舞う様子を、一歩引いた目線で冷静に見つめる層もいます。

今回カメラが収めたのは、社会的なプロパガンダなどではなく、個人的なワンシーン。世の中の大多数と地続きの、身近でリアルな日常風景です。


細かいディティールの話。

  1. サロンワークのユニフォームはピンク色、オフショットの私服は水色。これ、トランスジェンダーのシンボルカラーなんです。ピンク色と水色。ちょっとしたメッセージ的な演出。

  2. 時系列が判明すると編集で継ぎ接ぎした際に白けるという理由で、時計、タイマー機能付き温湿度計まで撤去されました。これにより撮影中は時間の進行がまったくわかりませんでした。

  3. 空調もカット。微細な振動音が動画に混じるとのこと。さすがに施術シーンではエアコンを点けましたが。撮影は目に見えないところでも苦労がある、としみじみ。

  4. ざっくりした発注の中で唯一要求したテーマはアングラ感。先述したようにお客様おいでませ感はいらない。奏功というべきか、夜の蝶的なアーバンライクな一幕が撮れました。うん、いいじゃない。でも、想定の斜め上。

  5. 新宿二丁目では人気のタイ料理屋に赴きましたが、前候補として渋谷の居酒屋が挙げられていました。もっと独自性を持たせたい思惑で、再考した結果、タイ料理屋に。タイは言わずと知れたオカマのメッカ。そもそも狙ってたわけじゃないんですけど。なるべくしてなったというか。目に見えないマグネットパワーが働いたんでしょうか。

  6. あと昔描いていたマンガのキャプチャは黒歴史だったんですが押し切られることに。ロールモデルの質問のくだりで、またマンガネタを踏襲させてくる辺りが心憎い。上手にまとめてくれるなぁという感じ。

  7. 最後の場面で、そもそも女として生まれたかったかという問いに対して言下に否定したことの補足。根無し草で地面から足が着かずに生きているような解釈をされたら困るので。LGBT界隈ではグラデーションという表現を用います。男性と女性の二元論ではなく、特定のカラーリングに固着せず、もっと彩り豊かで多様な価値観を推し進めようという意味。もちろん好き放題やりたい放題が認められるわけはありません。権利や自由を主張するなら、より責任を伴う自由が求められて然りだと思います。


小倉さんが「悲壮感がないテーマになって良かった」と私に言いました。

セクシュアルマイノリティにまつわるイメージってそんなんなのかなぁ。社会や世間が認めてくれなくても好きに生きればいいのにと思います。もちろん責任を伴った自由で。

イジめられてる迫害されてる蔑ろにされてるって、駄々こねておねだりしてる印象がセクマイにはどうしてもあるんでしょうか。

だとしたら、その偏向的バイアスの風向きを少しでも変えられたなら良かったかな、と思います。

当事者であるなら、なおさら自分のような人間が発信していかなければ、と思っています。


セクシュアリティはパーソナリティの一部分に過ぎないものです。

趣味は読書、好物はオムライス、セクシュアリティはゲイ、みたいな。それとは別に、もちろん個人のプライバシーは守られて当然ですが。

むしろ男から女に変えてみたとか、女だけど女が好きとか、アイデンティティとして胸を張っていいと思うんですよね。個性的でおもしろいですよね。私なら興味本位であれこれインタビューしてみたくなります。

らしく、楽しく、誇らしくのスローガンはマイノリティだけの特権ではなく、誰にとっても当たり前の人権の話なのです。

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