【オカマ酒場放浪記】新宿でタイムマシーンに乗って ※酒無し(食堂 長野屋)
- administrator
- 2021年11月28日
- 読了時間: 3分
総合 4.0
料理・味 4.0
サービス 4.5
雰囲気 4.0
CP 4.0
酒・ドリンク 0.0
~¥999/1人
(訪問日時 2021/11/28)
食べログ(食堂 長野屋)⇒ https://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13089386/
新宿駅東南口の改札を出るとまっさきに目に入る赤い屋根。
長野屋さん。
年季の入った社屋。煤けた壁。創業から百年以上は越す。忙しない新宿の開発に移ろわず泰然自若と存在し続けるレガシー。
日曜の午後に訪れると店内は八分程度の埋まり。ただ食事中にぱらぱらと卓が空いていったので、タイミングとしては遅い昼日中のピークタイムだったのかも。
ウインズ新宿が目当てなんだろう競馬新聞を片手に赤ら顔のオジサマが席を立つと「がんばってね」と女将さんが声をかける。火打石でも打ちそうな風情。
あるいは酒瓶を卓上に静かに文庫本に没頭する中年男性の背中。日曜日のお父さん像として、個人的には支持する。読んでいるのは時代小説か、サスペンスか、妄想を掻き立てられる。
と思えば後方のテーブル席には大学生風の男女のグループが、心持ち大人しい様相で箸を動かしている。そりゃハンバーガー屋やコーヒー屋とは空気が違うものね。
老若男女というか玉石混交というか、不思議な面子がワンフロアに会している。それもこの店の立地が大きく影響している。
店の引き戸は常時開け放されていて、その扉一枚を隔てて、まるで別世界。疑似的なタイムマシーンがここにありました。新宿のど真ん中なんだよね、ここ。でも私の知っている世代の新宿ではない。店内の壁に貼られたかつての新宿の風景写真。モノクロのものもあります。こんな時代の新宿を、当然ながら私は知らない。多分、私の親も見たことないだろう。
店内は二人の女性が回している。お一人は黄色地の着物に割烹着という出で立ち。おそらく女将さん。昭和レトロなんて単語が囃し立てられて、あえてそう模倣された懐古趣味のお店が蔓延る中で、長野屋さんは正真正銘のレガシー。外連味も気取ってる風も、欠片もない。
人懐こい接客。きっと手隙の際には、一見のお客さんにも気軽に世間話を振ってきそうな物腰。
レジの奥で物が落ちる音。ファミレスなら「失礼しました」だけど、ここでは「あらあらまぁまぁ」。アナログで温かい。合理的なオペレーションではないかもしれないけど、だからなんだって話。そんなのそこら辺に掃いて捨てるほどある資本系の店にやらせればいい。アルバイトがハンディ片手に「喜んで」とか無機物に話しかける要領で返事してくれる。
注文したのはカツ丼。連れはカツカレー。お酒を嗜まない連れだったので、この日は食事だけで。
お互いにちょっとずつシェアして食べる。美味しい。カツ丼は甘い味付け。玉子がお肉に絡んだ王道。カツカレーはいわゆる黄色いカレー。惜しげもない盛り。これこれ、こういうのでいいんですよね。行列並んでインスタ映えするスパイスカレー、どやぁ、とか心底どうでもいい。
もしまた一人で来ることがあったら、その時はアルコールを片手に、肉豆腐やハムエッグを頼んでみたいかな。カキフライにさばみそもいいなぁ。定食のおかず抜きメニューも豊富みたいです。あと清酒もありました。でもカウンターもない小振りな店内なので、テーブル席に長っ尻だと申し訳ないなぁ。
ここまで、故きを温めて新しきを貶す物言いを結構しましたが、反省してます。すみません。ただそれだけ長野屋さんの希少性が高いってことなんですよ。現代の資本主義な飲食店と比べるのが無理な話で。
食し終えて店を出ると、いつもの新宿の空が広がっていました。
連れは長野屋さんを大絶賛。というか行きたいと言ってきたのは連れだし。
「だから百年やれてるんだ。見習わないと」とか言うし。百年も商売やるつもりか。どんだけ~!
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